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05_get up, stand up
歌を封じられた渚は、例えるならおぼれているイルカみたいだった。
物理の授業で当てられれば「……わかりません」とうなだれ、マテマテの授業で当てられても板書ができずに黒板前で立ち尽くした。
痛々しくて見ていられない。
隣の標津も身を小さくしている。なんでお前が? こうなるのはお前が望んだことでしょ。
なんどかそういうことが続き、あれ? とおれは首をかしげた。
ひょっとして、ひょっとしなくても……そういうこと?
標津って渚のことを?
だからあれこれ文句をいったりちょっかいを出していた? 名前だって苗字じゃなくて『わざと』下の名前で呼んでみたりして。
──なんだよそれ。
小学生かよっ。
おれは「ハイッ」と勢いよくマテマテへ挙手をする。
「おれがその問題を解きたいですッ」
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