後悔なんてしない

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「おい、どういうつもりだよ。別れるって」 チェーンがかかったままの状態だから、そんなに開いていないドア越しで、尚吾は声を潜めて怒鳴っている。 大声なら近所迷惑になるから、それくらいなら良しとする。 「メッセージの通り、別れる。そのままの意味だけど?」 僕はお前は何を言っているんだ?とキョトンとしながら、冷静な声で応える。 「何 勝手な事言ってんだよ?俺は別れないからな!」 僕のニヤケていただろう顔が、一瞬で真顔になってしまった。 スゥーと息を吸う。 そして一気に捲し立ててやった。 「勝手?そう?じゃあ、尚吾はなんだ?今日の約束を勝手にナシにして、女の腰に手を充てて、ニヤニヤしながら人目を憚らずキスをしていたのは誰だ?女とイチャイチャしていた理由は?キスしていた理由は?簡単に答えろ」 僕も声を抑えて捲し立てた。 「なっ?!」 尚吾はヒュッと息を飲む音を立て、驚いたように固まっている。 「なっ?!じゃないよ。何絶句してんの?答えになってないよね」 「俺が好きなのは南海なんだ!あれは遊びで…っ」 「僕はね、恋人以外と遊びでキスはしない」 「……ごめんなさい」 ボソッと謝って下を向いた。 「尚吾、正直に言って? 他の人ともセックスしたでしょ?観念しなよ?」 「―――っ!」 尚吾は顔を反射的に上げたのだろう。 一瞬だけ何かを言い淀み、そしてその時、目が泳いでいることに僕は気が付き、僕は悟った。 尚吾が嘘をつく時の癖だから。 でも敢えて黙っておく。 長い沈黙が続く―――…
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