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自分の実力が認められないことに苛立ち、自暴自棄になっていた。
家に引きこもり、何も手につかなかった。
暖房もつけず寒く暗い部屋の隅に蹲り、歌うこともなかった。
「気晴らしにカラオケでもいこうよ」
そんな時、声を掛けてくれたのが親友だった。
親友は俺の現状を一切詮索することもせず、ただただヘタクソな歌を気持ちよさそうに歌っていた。
俺は気付いた。
歌を聴いて欲しい、売れたい、認められたい、そんな思いで歌っていたようだ。
路上で弾き語りをしていた時、来る日も来る日も目の前を通り過ぎていく人たちを恨んでいた。
なんで俺の歌の良さが分からないんだ!
お前らの耳は節穴か!
俺の実力は間違いないんだ!
お前らの方が間違っているんだ!
いつしか歌うことの楽しさを忘れていた。
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