シンガーソングライター

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小気味よいフィルインからドラムのリズムが刻まれる。 ブラックミュージックの影響をもろに受けたというドラマーの演奏は、体が勝手に揺れ動くような独特なリズム感がある。 生演奏ということを重視していて、その場の雰囲気を大事にしている。 「同じ曲目でも同じライブはない」が口癖で、本番だというのにアドリブを入れてくる。 すると、リズムに乗ってベースの重低音がズンズンと腹の底に振動を与える。 普段は寡黙で物静かなベーシストは、俺のサポートバンドを支えるバンドマスターである。 上物(うわもの)と呼ばれる、楽曲のメロディー主体のヴォーカルとギター。 リズム隊と呼ばれるドラムとベース。 そんな二つの個性を上手く結びつけるベース演奏はこのバンドに欠かせない存在だ。 リズム隊の演奏で会場が温まると、エッジの効いたギターリフが響く。 若くてヤンチャなギタリストはこのバンドのムードメーカーだ。 感情を表に出すスタイルで、ギターソロでもその時の感情を爆発させる。 驚いたのは、バラードのギターソロで一切弾かなくなったことだ。 後で聞いたら「感極まった」だと。 普段、激しいロックナンバーで荒々しくギターをかき鳴らしているのが定番だったのに。 面白くて信頼できるサポートメンバーに恵まれた。 このメンバーで満員の観客を沸かせる。 大丈夫、俺は出来る。 緞帳が上がる。
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