5人が本棚に入れています
本棚に追加
それなのに、今年は階段が崩れてしまった。
人によって階段の見え方は違うが、本質、というか、支える軸となる柱は同じらしい。その柱の老朽化が進んでいたらしく、ついに崩れてしまった。
本当はメンテナンスをしなければならなかったのだが、上る人が途絶えるということが中々なく、できなかったという。仕方がないことだった。
誰にも、どうしようもないことだった。
僕は、今年、階段を上らなければならない年だった。階段が崩れたのは、ちょうど僕が上り始めた頃だ。
階段の入り口を通って、上り始めてしばらくしたとき、上からガラガラと音がした。驚いて音の方へ進んでみると、瓦礫の山が見えた。先の階段が崩れてしまい、上れなくなってしまっていたのだ。僕は急遽、一旦外に出ることになった。
僕のような人は、たくさんいたらしい。一旦外に出た人たちは、階段が直るまで待つことになった。一度自宅に戻るようにと指示が出された。
崩れた階段の、もっともっと先にいた人は、そのまま上ることができた人と、階段から落ちてしまった人との二通りだったという。
上り続けることのできた人は、すぐに上り終えたと聞いている。落ちてしまった人は、僕ら同様、一旦待つしかなかった。
最初のコメントを投稿しよう!