AM:7:47

2/3
前へ
/79ページ
次へ
「かっこいいね」 「ね、朝から見れて幸せ〜」 釘づけになってる私の隣で、他校の制服を着た女の子たちが嬉しそうにはしゃぐ。写真や動画を撮る人もいる。 私はもう一度、王子さまを瞳に映す。 蜂蜜色の艶やかな髪、涼しげな二重の黒い目。透き通った白い肌。すーっと通った高い鼻筋に、薄くて形のよい唇。身長はすらりとしていて骨格も完璧。 行き交う人たちを引きつける、美麗な顔立ちをした王子さま。 なんでこんなにかっこいいんだろう。 と、見惚れる私の背中にハリのある声がぶつかった。 「一般人に戻るのもったいないね。辞めてどうするんだろ」 「弁護士になるっぽいから学業優先でしょ。うちの大学(とこ)通ってるしさ、もしかしたら会えるかもよ」 「え。そうなの!?」 「嘘!?知らなかったの!?めっちゃ有名な話なんだけど」 「法学部にそんなイケメンいた?あたし見たことないよ〜!」 私の頬に不満がぷくっと溜まった。 甘い熱に攫われて、持ち上げたスマホをポケットへ突っ込んだ。CMが終わった瞬間、別の誰かが残念そうに呟いた。 「あーあ。顔面国宝の見納めも今日までかぁ」 「しっかり目に焼き付けとこ」 映像の向こうの人、雪村(ゆきむら)あやみ。 私の幼なじみだ。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加