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私が中学1年生の頃。
クラスにあるカップルがいた。
名前は健太と綾子と言い、非常に仲が良かった彼ら。
小学生の頃から付き合っていたらしいが、ある日、健太の浮気が発覚してしまう。
と言うのも、実はこのカップル――大変言い難い事だが、互いの容姿にかなり差があったのだ。
誰が見てもイケメンで、女子からモテていた健太。
一方、綾子の方はと言うと……前に交通事故で顔に酷い怪我を負っていた為か、とても筆舌に尽くしがたい容貌をしていたのだ。
けれど、素直で優しく、穏やかな性格をしていた綾子。
彼女はよく部活で作った焼き菓子をクラスの皆に振る舞ってくれたり、勉強が苦手な生徒の為に遅くまで残って勉強を教えてあげたりしていた。
故に、クラス内には味方が多かった綾子。
クラスメイト達は、口々に健太を責めたてた。
しかし、そんな彼らの目の前で――長年交際していた綾子に対して、健太が口にしたのはあまりにも酷い言葉だったのだ。
「今まで俺と付き合えて良い夢が見られただろ?化け物なんだから有難く思えよ!」
その言葉を聞いた瞬間、綾子は泣きながら膝から崩れ落ちる。
彼の言葉が余程ショックだったに違いない。
綾子はその日から1週間も学校を欠席した。
そして、彼女が再び学校に姿を現した日。
綾子は、健太に『あるお願い』をした。
「貴方のことは、もう潔く諦めるわ。でもね?貴方とお付き合いが出来た思い出に、貴方の写真を手元に残しておきたいの」
だから、貴方の写真を撮らせて欲しい――涙ながらにそう懇願する綾子。
健太は嘲笑を浮かべながらそれを承諾した。
そうして、健太の写真を撮影してから数日後。
家庭科の授業中、不意に健太が大きく床に倒れ込んだ。
その際、彼は、教師の机の上にあった【折れたミシン針を大量に集めた箱】の上に顔面から突っ込んでしまう。
呻きながら、ゆっくり上体を起こす健太。
その顔には――折れた大量のミシン針が突き刺さり、まるで針山の様だった。
そんな彼をうっとりとした瞳で見つめながら、自分の裁縫箱からそっと何かを取り出した綾子。
大きく丸い――幾つもの針が刺さったソレは、まさしく針山だ。
その針山を、綾子はそっと二つに割った。
マジックテープで接着されていたソレの中から出てきたのは……あの日撮影したのであろう、健太の写真だ。
無数の針に突き刺され、黒い穴だらけになった健太の写真。
それを撫でながら、彼女は呟いた。
「これでお揃いになったね、健太君」
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