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彼からそんな言葉を言われて今日でちょうど1ヶ月。
予感はしていた。なんとなく心も体もズレていった事に気づかないふりをして、彼の素っ気ない態度を勘違いだと思い込んだ。
だからそう言われてびっくりはしなかったけれど酷く落ち込んだし、この1ヶ月がやけに長くてやっぱり嫌だった。
1ヶ月間、わたしの気持ちは変わらない。
彼から最終宣告を受ける今日、運悪く休日で朝から暇を持て余す。仕事でもしていれば多少気が紛れるのに。日曜日遅い朝食のコーヒーがやけに苦く感じて半分以上残してしまった。
「はぁ…」
ため息を何回ついただろう。
鳴ってもいないスマホを何回も確認し、握ったスマホの感触で手が酷く汗ばんでいる事に気づく。
まるで力の入れ方を忘れてしまった無気力な湿った掌からずり落ちたスマホは、ガタンと重苦しい音を立てて床へ落ち、わたしはビクッと肩を上げる。
速くなる心拍数が、見えるぐらい感じる。
どうしよう。
今日完全に私達は終わるのか。
でも待って、距離を置いてお互いの存在の大きさに気づくパターンだってある。
どうしよう。
私は別れたくはない、あなたが必要。
でも、
あなたは私が必要?
必要じゃないかもしれないから距離を置こうって言った?
でも距離を置いた事によって今までの日常がとても幸せだったことに気づくよね?
永遠ループ。
落ち着こうと胸を掌で押さえつけても出てきてしまいそうなわたしの心臓をどうすればいいか分からない。
「ティロン」
いつものメール音なのにまたビクッと肩を上げる。
床に転がったスマホはわたしを嘲笑うかの様にわざとらしく妖しく光り、急いで拾い上げたスマホから遅れてくるバイブレーションが身体中に痛く響く。
心臓が痛い。凄く痛くて怖い。
もう暗くなってしまったスマホの画面をしばらく眺め、深呼吸をしてからメールを開く。
「今から電話してもいい?」
素っ気ない短い文章が一瞬にしてわたしの瞳に湿気をもたらす。
ますます速くなる心拍と胸の痛みを掌で強く押さえつけてみたが何も変わらない。
心拍数が早くなるのが鬱陶しい。
小刻みに震える指で返信を打つ。
「いいよ」
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