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ついつい長く語りすぎたと気づいたのだろう、少し前屈姿勢になるエリック王子。あれは、卵なりにしょんぼりしていることを示しているつもりらしい。
「その森に、キノコとベリーを取りに弟と二人で馬に乗って向かったのですが……その日はいつもより少し奥まったところまで行ってしまいまして。少し日も落ちてきたので帰ろうと弟に声をかけたその時です。木陰から、飛び出してきたものがありました。真っ黒な、大きな影です。木陰になっていたので姿は良く見えなかったのですが……」
それを見て、弟のエドワードは尻餅をつくほど驚いてしまったという。
そして思わず叫んでしまったそうだ――おばけ!と。
『誰が、おばけじゃあああああああああああ!』
しゃがれた、怒りの声。嫌な予感がして、エリックは弟に覆いかぶさったそうだ。すると、ピカー!と白い光が弾けて――気づいたらエリックは卵の姿になってしまい、エドワードに抱きかかえられていたというのである。
「声からして年配の女性だと思います。それから、西の森の奥地には魔女が住んでいるという伝説がありまして……そのせいで、父上も相手を魔女だと呼んでいるわけです。僕も実際に見るまでは、そのような伝説信じてはいなかったのですが」
「なるほど、実際に怒りを買ってしまったのはエリック王子ではなく、弟のエドワード王子だった、と」
「そうです。なんとかして魔女を説得して魔法を解いて頂こうと思ったのですが……それ以来、いくら使者が森に出向いても魔女は姿を現してはくれず……」
なるほど。卵にかかった強い強い魔法の正体は、その魔女の怒りであったというわけらしい。ふむ、と頷いたソフィアは、卵を抱えて立ち上がったのだった。
「んだら、俺と一緒にその森へ行くべ。魔女に会って、説得するのが一番よか」
「え、え?でも……」
「なんとかなる。なんとかせんと、エリック王子が救われんべ?俺も、あんたをなんとかしてやりてえ」
聞こえるのは爽やかな声。イケメンなのかもわからない、卵の王子様。でも、彼はただびっくりした弟を庇っただけで、何も悪いことなどしていないのだ。家族を守るために命を賭けられる、なんとも素晴らしい人物ではないか。
それに、鹿狩りに関する考え方も好感が持てる。命を大事にできるような男が、悪い人であるはずがない。
「魔女がどんなスキルを持ってるかわからねえが、きっと話せばわかってくれる。あんたは卵にされたが殺されちゃいねえ。卵の状態の王子様は、落としただけで死んでしまうんだろ?」
「それはそうですが……」
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