<4・あいのうた。>

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『そうとも。暗くて見えなかった?その証拠がどこにあるってんだい。あたしはね、人の見た目だけを見て、平気で人を傷つけるようなことを言う心の醜い人間が大嫌いなんだ。愛がない奴は、誰からも愛されないよう、自分でろくに身動き一つできない卵にしてやるんだ。ああ、そう言う風に思っていたら、あたしの“魔法”は目覚めた。あたしはこの力で、あたしを馬鹿にする奴をみーんな卵にして困らせてやるのさあ!』  はははははははは、と魔女は声高らかに嗤う。 『お嬢さんはそこの王子様らと、どういう関係なんかね?あたしのことを馬鹿にしにきたってなら、あんたも卵にしちまうよ!』 「そんなわけあるか。俺は、王子様を助けて欲しいだけだ」  大体なあ、と両手を広げてみせるソフィア。 「俺に、あんたを馬鹿にできるとでも思ってっか?この通り、俺はダサい田舎もんだ。それにくわえて女にしたらでけえし、声も低いし、筋肉質でとても女らしさなんかねえ。お城にいるお姫様らとはえれえ違いだ。全然美人でもなんでもねえ。……でもな、それでも俺がそんな可愛くもなんともねえ自分に自信さ持てるのは、村のみんなが本当に優しくしてくれたからだ。愛をもって育ててくれたからだ。俺は……そんなみんなを見て育ったから、自分もそういう人間になりてえんだ!」  幼いうちに両親を亡くしたのは事実。悲しかったのも事実。  でも、自分は不幸せだと思ったことは一度もない。  普通の女の子より大きくて、筋肉質で、かわいらしさの欠片もないみんなを村のみんなは愛してくれた。それがどれほど幸せなことかをよく知っているからだ。 「愛がねえ人間が大嫌いだって言ったな。ああ、俺も賛成だ。人を見かけで判断して、嘲笑うような輩がだいっ嫌ぇだ!でもな、少なくともエリック王子はそうじゃねえんだぞ。敬語もろくに話せねえ、教養もねえ俺の言葉を否定しねえ。対等に話してくれる。俺の考えを……中身を見てくれる。それに」 『それに?』 「愛がねえ人間が、どんな攻撃かもわからねえのに……弟を命懸けで守ったりするだろうか?なあ、おめえもわかってんだよな?」  そうだ。  もし彼女が、誰のことも傷つけたいだけ、苦しめたいだけならば。それでウサを晴らしたいのであれば。  さっき宣言したように、兄弟二人とも卵にしてしまえばよかったのだ。しかし彼女は結局兄だけ卵にして、その卵を持って弟が逃げるのを見逃しているのである。  それはきっとただ動揺しただけではなくて。
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