<1・たまごひめ。>

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「ああああああああああああん、あああああああああああああああああああああああああああん!ソフィーねえちゃ、こわかった、こわかったああああ……!」 「よしよし、もう大丈夫だかんな。こええ熊はいなくなったかんな!あんだけ姉ちゃんが強いって証明したんだ、奴らももう村さ来ねえだろ!」 「うん、うん……ありがと、ねえちゃ……」 「ねえちゃ、強い……クマより強い……」 「おう、おう。俺ぁ誰より強ぇんだ。クマなんんかに負けたりしねえんだ。だからもう、安心しな」 「うん、うん、うんっ……!」  子供達をなだめながら、彼等を家へ送っていく。ソフィアの腕は二本しかないので、一人は肩車させてもらった。家に到着する頃には三人とも泣き止んで歌を歌っていたほどである。クマに襲われたものの、怪我がなくて本当に良かったと思う。怪我をしてしまっては何より、心に深手を負ってしまう。体の傷より心の傷の方が簡単に治らないということを、ソフィアは誰より知っていたのだった。 「ソフィー!ソフィーや!」 「んん?」  鍬を担いで自宅に戻ろうとしたところで、すっとんきょうな声が聞こえてきた。ワナおばさんである。彼女は転びそうになりながら坂道を駆け下りてくる。 「どうしたんだ、おばさん。そんなに急いだら、あぶねえよ?」 「い、急ぎもするさ。大変だ、大変なんさ。お、王都から……王様の馬車が来とんよ」 「はあ!?」  王様の馬車。  多分、王家の家紋がついた白い馬車だろう。聞いたところによれば、白馬車を使えるのは王様と王様に仕える者達のみだというではないか。 「白馬車が?こんな辺鄙な村に?なんで?」  ソフィアは首を傾げる。  王都からこの村までは、馬車で一時間ほどはかかる。距離としてはそこまで離れていないが、山一つ越えなければいけないわけで。正直、この村の存在自体、国から忘れられていてもおかしくないレベルだというのに。 「わかんねえ。王様は乗ってねえようだ。でも、白馬車の使者が言ってんだ」  おばさんは青い顔でソフィアに縋り付いたのだった。 「なんでも、ソフィアっちゅう娘っこを出せって、村長に迫ってんだとよ!」
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