<3・おうじさま。>

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 王子様の趣味に、ついつい説教地味たことを言ってしまった。これは不敬罪になるだろうかと少しだけ思たが、王子様はまったく気にしなかったようだ。どこか上機嫌に殻を揺らしているように見える。 「今の言葉でソフィアさん、貴女がどのような人なのか少しだけ分かったような気がします。私はとても嬉しい。王子は学校に行くこともできず、お城でずっと家庭教師に勉強を教えてもらうばかり。庶民の子供達のように遊ぶこともできませんし……配下たちは皆、父に遠慮して私に忌憚のない意見などくださらない。遠慮のない貴女の言葉は、とても気持ちが良い」 「そ、そうだべか?」 「ええ、それに……命に関する考え方は、私も同意です。何かを殺したのであれば、人はそれに対し責任を負わなければいけない。それを糧に生きる覚悟、時に報復される覚悟。楽しみのためだけに狩りをするというのは、それらと絶対的に矛盾していると思いますから」  ご安心ください、と王子。 「私と弟は、狩りに出かけても鹿は狩りません。鹿狩りをした、ということにしているだけです。他の貴族たちへの見栄ですよ。実際は森にベリーとキノコを採りに行っているのです。それをひそかに厨房に提供して料理してもらうのがひそかな楽しみでして」 「おお」  ということは、西の森には豊富な食材あがるということか。ソフィアを目を輝かせる。 「どんな木の実やキノコがあるべか?俺がいた村にも森はあったけんど、小さいもんで自生しているキノコやベリーは多くねえんだ。キノコに至っては、殆どが毒キノコで食べられねえしなあ」 「興味がおありで?」 「ああ。どんな料理にするんだ?バアちゃんや村の人達にも食べさせてやりてえな」  そこから暫く、西の森のキノコとベリーの話で盛り上がってしまった。ついつい本題から話を逸らしてしまうのが己の悪い癖だな、と反省するソフィア。しかし、とても有益な話が聞けたのは良かったように思う。  西の森に生えるアイゼンキノコ。藍色の傘が特徴で、毒のあるニセアイゼンキノコとの違いは傘の裏側の斑点模様だという。斑点がある方がニセアイゼンキノコである。しっかりアク抜きしてゆでてからソテーにすると、肉厚で大変美味しいらしい。  ベリーならば、クロワッサンベリーが美味しいという。まるでクロワッサンのような三日月形をした珍しいベリーで、濃い赤紫が特徴。収穫するためには木の高いところまで上らないといけないのでコツがいるらしい。 「すみません、話が逸れてしまいましたね」
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