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どうやら私は、彼の学力を過大評価していたらしい。
その夜、連絡先を交換したばかりの長岡くんからメッセージが届いた。数学の問題の解き方が分からないのだという。
私も問題集を開き、該当する問題にあたった。しかしそれは、やや係数の絶対値が大きいだけの、何の変哲もない連立方程式だった。
『これだよね?』
私は画像を撮って、メッセージと一緒に送る。
『うん』
『普通に、 x か y の係数を揃えて引き算して、一つの式にするだけだよ』
『そこまではできたんだけど』
私は首をひねる。そして次の文面が表示された瞬間、言葉を失ってしまった。
『2桁同士の割り算って、どうやるんだっけ』
──マジか。
携帯を置きたくなる気持ちを、何とか抑えた。見放してはいけない。私の歌を聞いたみんなも、こんな気持ちだったはずだ。
『期末試験の具体的な目標ってあるの?』
『どれかの教科で平均点以上とること!』
『ちなみに、この間の中間試験の点数って、どんな感じ?』
列挙された点数は、軒並み50点を下回っていた。
私は思い切った決断を下した。
『数学は捨てよう』
その後、国語と英語もあきらめる運びとなり、理科と社会に専念することとなった。
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