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慣れない生活で疲れがたまっているのか、この日は電話に出たときからすでに眠そうだった。
「今日は休む?」
「いや、大丈夫」
そうは言うものの、声に力がないし、問題の正答率も低い。このまま続けたところで、何も頭に残らないだろう。
「昔から、教科書見ると体が拒否反応を起こして眠くなるんだ」
「厄介な体」
「だろ。今日も学校でさんざん言われたよ。俺に勉強は向いてないって」
昼間の光景が蘇る。同時に湧き上がってきたのは、事情を知ったうえで何もできなかった無力感だ。
私の口は、その感情に突き動かされた。
「ほんとうに目が覚めるなら、少しだけ歌ってあげようか?」
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