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翌朝、目が覚めると胃が痛んだ。私の心境を表すかの如く、窓を激しい雨が打ちつける。
普段なら夢の続きをうつらうつら描いているところだけれど、今朝に限っては、否応にも昨日の惨劇が思い返される。
私の喉が音を発した途端、クラスがざわついた。すぐに先生が咎めたが、彼女の顔にも戸惑いの色が浮かんでいた。
急いで立て直さなければとは思うのだけれど、何せ自分は正しい音程をなぞっているつもりだから、修正の方向性が分からない。先生の表情を頼りに、手探りで音を上げたり下げたりしていると、だんだん彼女の顔色が悪くなってきた。クラスのざわめきもどんどん広がっていく。
結局、最後まで歌い切ることはできたが、その瞬間、先生は謝りながら音楽室を飛び出して行ってしまった。音楽を生業とする彼女はきっと、常人よりも繊細な耳をしていたのだろう。
「学校、行きたくない……」
涙とともに、思いが言葉となって溢れ出るが、いつかは登校しなければならない。先延ばしにすればするほど、行きづらくなる。行き着く先は、不登校だ。
「ハルカ! 起きなさい!」
1階から母の声がする。昨夜、涙をこらえてことの顛末を話した際、姉と共に腹を抱えて笑った女の声が。
私は沸々と湧き上がる怒りを糧に、起き上がった。
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