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 ルミに変な疑いをかけられたからというわけではないが、長岡くんの動向に意識が向くようになった。もともと目立つタイプで、授業中におかしな受け答えをしてみんなを笑わせたり、休み時間に友人とふざけあったりしている場面はたびたび目にしていたのだけれど、改めてみると、ただのお調子者というわけではないようだった。  あれはいつだったかの体育の授業でのこと。  その日は運動場を2つに分け、男女ごとに走り高跳びをやっていた。  憂鬱な気持ちで順番を待っていると、男子たちの方から大きな音がした。どうやら、バーを支えるスタンドごと倒れてしまったらしい。マットの上では、海獣を思わせる体格の青木(あおき)くんがおろおろとしていた。  すぐに先生が直して、何事もなかったかのように再開したが、派手な失敗をした彼の心境はそう簡単にもとには戻らないだろう。明るい男子なら、笑いに変えることもできたかもしれない。けれど、青木くんはそういうタイプじゃない。親しい友人もいないのか、うつむきがちにマットを離れ、列に戻った青木くんはぽつんとしていた。何人かは、それを見てにやにやとしている。  そんな中、彼に話しかけに行ったのが長岡くんだった。ふたりが話しているのは教室では見たことがない。青木くんも驚いたようだった。会話の内容までは聞こえないが、次第に青木くんの表情も和らいでいった。  そんな一部始終を眺めていると、肩をたたかれた。ルミだった。 「ハルカちゃん! 順番!」  ふと我に返る。運動場の半分の視線が、私に集まっていた。
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