この海に破戒の歌声を

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 そして、今から十三年前の夏。樫美島では毎年夏になると、島一丸となって夏祭りを開催する。その年も、八月の第一週の土曜日に夏祭りが行われた。島の中心地には屋台が並び、浴衣姿の大人子供で賑わっていた。  みこしパレードや抽選大会、歌謡コンテストなどのイベントが終盤を迎え、最後に打上花火が連発された。  島民は一斉に満開の夜空を見上げ、目を輝かせ、心を踊らせた。その時、焼きそばを販売していた屋台から勢いよく炎が燃え上がった。たちまち他の屋台にも燃え移り、一瞬にして夏祭りが火の海と化した。
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