1人が本棚に入れています
本棚に追加
「お待たせっ」楓歌は僕の顔を覗き、桃色の液体が入った瓶を渡してきた。「これ、飲む?」
中学校の近所の個人コンビニで売られている『さくらコーラ』というドリンクだ。島内の子供は皆これが好きである。
ありがとう、と言い受け取ると、楓歌は隣に座った。
「せーのっ」二人同時に瓶の蓋をひねって開けた。
シュッと音を立て、炭酸が溢れる前に口に運ぶ。
「久しぶりに飲んだな」
「最初に出る感想がそれ? はい、やり直し」
「シュワっとした刺激の後に、春の風が鼻に抜ける。まるで心躍る四月に舞い降りたようだー。こんな感じでいい?」
「さすが文学少年」
そんな下らなくも美しく貴重な時の流れを、僕らはお互いを探るように慎重に歩いていた。
最初のコメントを投稿しよう!