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楓歌が少し怪訝な顔を見せたので、僕は慌てて付け加えた。「夏休み中にいつでも歌声を聴けたらと思って……」
「いつでも歌うよ、そんなの。明日もここ来るし」
「家族との旅行もあるし、毎日は来れないんだ」そう言って、レコーダーを楓歌へ差し出した。「『時空の彼方へ』歌って」
浜辺で指切りをした次の日に聴いた『時空の彼方へ』はとても素晴らしく、その日から彼女の歌う『時空の彼方へ』の虜となった。
楓歌は仕方ない、といった様子で、右の掌を差し出した。「帰りにさくらコーラ奢りで」
母に似た歌声で母の歌を歌う彼女は、永遠という言葉の向こう側に旅立ったかのごとく魅惑的で罪深かった。
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