この海に破戒の歌声を

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 彼女は死んでいた。  小屋の下敷きになったというわけではなかった。小屋の梁にロープを結び、首を吊って垂れている。背後には椅子が一つ倒れていた。  目の前に並べられた衝撃で息が詰まり、目眩がした。しゃがんで目を瞑り、深呼吸をする。  幾分かの時間が過ぎ少し落ち着いたため、彼女の元へ近寄り、怖々と手を伸ばした。  楓歌。上手く呼べたか分からなかったが、返事をする楓歌はもういない。
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