この海に破戒の歌声を

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「何⋯⋯してるの?」  彼女は構わず歌い続けた。ポニーテールがわずかに揺れる。 「歌、歌ったらだめだよ」今度は少し強めに言い放った。  すると、ようやく彼女は歌うのを止め、こちらを見た。「雨音でバレないと思ったのに」  誰かにバレたらどうするの、と呆れたように言い、僕は床に転がっているバケツやロープを避けながら、隣にあったもう一つの椅子に座る。 「もうバレてる」笑いを含ませながら、彼女は僕を指差した。
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