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「こっち」
ごちゃごちゃと、修理中なのだろうパソコンや、よく分からない機材で散らばっているバックヤードに促されると、男はいきなり作業台の上に俺の身体を押さえつけた。
「ちょっ! アンタ、何のつもりだ!?」
「犬がわざわざ炎天下の中、俺のために歩いてきてくれたんだろ? ミルクくらい飲ませてやるよ」
言うが早いが、男に荒々しく唇を塞がれた俺は、またしても条件反射ですぐに舌を差し出してしまった。
だが、やっぱり応えてはもらえなくて盛大に舌は空振りし、俺は二度目の屈辱を受ける羽目になる。
「お前はすぐ舌を欲しがるマテが出来ない犬だな。躾が大変そうだ」
すぐに下衣を暴かれて、熱を持たない男の標を握り込まれれば、キスや胸への愛撫がなくとも、そこへの手遊びは生理現象で兆していくから腹が立つ。
「ろくな前戯も出来ねぇ奴が人を犬扱いしてんじゃねぇよ」
「前戯? 胸でも触って欲しいのか?」
(クッソ、死ね……)
男がTシャツの裾から手を差し込んでくるから、(乳首でも弄る気になったか? クソオヤジ)と、浅ましくも期待している自分に気が付く。
だが、俺の想いに反して男の手は胸の突起を掠める前に離れていってしまったから、期待して損したと、小さく舌打ちをして思わず顔を背けた。
「汗だくで気持ち悪い。今度シャンプーしてやるからその時な」
「昨日散々汗だくで抱き合っただろうが」
「ああ……セックスの時は別だ。今のこれはミルクを飲ませてやるだけだから。餌やりみたいなもんだ」
「っ……ざけんな! クソオヤジ!」
すると男は握りしめていた熱のかたまりの敏感な先端を親指の腹で弄び、筋が浮いた裏側の凹凸を押しつぶすように刺激してくるから。
それだけで、作業台に半身を押さえつけられて宙に浮いている膝ががくがく震え出す。
「いつでも出していいからな?」
と――。
そこで店舗側から自動ドアの開く音がして、客が来た気配に男は作業台の上に置いてあった梱包用のビニール紐を切って、今にも爆ぜそうな俺の熱の膨張の根元をキツく戒めた。
ついでだと言わんばかりに、両手首もぐるぐる巻きにしてしまうと男は喉の奥でクツリと笑い、「犬、マテ」と一言告げ、あろうことか汚れた右手を俺のTシャツで拭って店舗へ去っていった。
(おい……このままとかありえねぇだろ……)
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