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「ただいま……」
う。酒とゴミ臭い。
家は綺麗じゃないから、あまり好きじゃない。
物心付いた時から、お母さんと二人暮らし。幼稚園の頃から、子供扱いを受けたことがない。小学校に上がる頃には、ご飯は家にあるものか、置かれたお金で何か買ってくるなどして自分で準備するのが普通。洗濯も、自分でする。それが当たり前だと思って生きてきた。
自分の家がおかしいと思いだしたのは、友達同士で家の話をするようになってからだった。
ほとんどの友達が、洗濯やご飯の準備をお母さんにしてもらっていて、みんな髪を可愛くセットしたり、女の子らしい服を着ていた。
当然私は、髪なんて結ってもらったことなくて。
友達のお母さんが可愛くヘアアレンジしてくれた時は、すごく嬉しかった。
ずっと、短かった髪の毛を、伸ばそうと思ったきっかけにもなった。
綺麗になれると嬉しいし、みんなが優しくしてくれる。だから、当時もっと美容を学びたいと思い、高校生の頃からコツコツとバイトして、美容学校へ行くお金を貯めた。
掃除を教えてもらわずに育った私は、掃除があまり得意じゃなかった。
とりあえず、疲れた体で、お母さんが散らかした空き缶とかお惣菜のパックだけでも片付ける。すぐに片付けておかないと、虫が湧いちゃうから、これだけはしておかないと。
外見は綺麗にしていても、家の中はぐちゃぐちゃ。
この家の中は、私とお母さんそのものを表しているようにも思えた。
きっと、このぐちゃぐちゃを見たら、みんなどこかへ行ってしまうんだ。
だから誰にも見せたくない。
お母さんに彼氏ができると、家の中に入れない日が多くなるけど、家の散らかりがいくらかマシになる。そして別れたらまたぐちゃぐちゃになる。それの繰り返し。
小さい頃は、それがすごく嫌だったけれど、今はなんだがもう、どうでもいい。
いっそ彼氏がいたほうが、散らからないだけいいのかもしれない。なんてね。
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