バンドに入った日

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 こんな状況で育った私だから、私自身も男関係にだらしなくて、16歳の頃、結婚すると信じていた年上の彼氏に裏切られてからは、誰彼かまわず付き合ったり別れたり、その場限りの関係を続けたりしている。  そうしていると、いくらか楽だし、たくさん求められる私は、価値のあるものに思えてくる。  でも、それじゃあ足りなくて、時々息ができなくなるほどしんどくなるから、また、その苦しみを埋めるみたいに、音楽を始めた。  初めは、嫌な気持ちを埋めるための歌とギターだったけど、やり始めると楽しくて、のめり込んでいった。  そして、やっているうちに思い出してきた。私は、歌を歌うことが大好きだったこと。  幼稚園でも、小学校でも歌を褒めてもらっていたこと。  あのお母さんが、歌声だけは褒めたこと。  世界中、すべてが敵のように思えていた私にとって歌だけが特別で、私の味方のような気がした。  でも、バンドっていうとなんだかな。面倒くさい気がする。  人間関係だって築かなきゃいけないし、自分の奏でたい音楽と相手の思考が違ったら厄介だし。  自由に歌えなさそうだし。  あの人たちの前にも、何回か誘われたことあるんだけど、今までぜんぶ断っている。  だから今回もさ、できればお断りしたいんだけど。ね。  
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