歌う花

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殺したのか、と問われると思ったのです。しかし驚いたことに母は私に殺されたとは思っていませんでした。眠ったまま首を絞められたので気が付いていなかったのです。なぜ私を連れて逃げなかったのか。母はそう言って私を責めるのです。 私も言い返しました 「おまえは!私に殺されたんだ! 私を愛さなかったから!私が殺したんだよ!」 しかし死者の魂は記憶を上書きすることはないようです。いくら私が言って聞かせても、母の花は私から殺されたことを理解しませんでした。 叫ぶように歌い疲れると、花は枯れます。しかしまた懲りもせずに地中から首をもたげて歌いはじめます。 お前はなぜ私を助けなかったのか。お前のせいで上の姉さんの出産を手伝いに行けなかった。長男が死んだのは不憫だった。なぜあんないい息子が死ななければならなかったのか。 花が歌うたびに私はその声に負けぬように叫びました。お前は私に殺されたんだ。お前が愛さなかった娘に殺されたんだ。お前が名まえも呼ばなかった娘に殺されたんだ。分かれ。分かれ。お前の罪を理解しろ。
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