歌う花

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しかし、母の花はお構いなしでした。私の声などなかったかのように、自分勝手な恨み言を歌っては枯れ、歌っては枯れ・・・・。 どれくらい繰り返したでしょうか。永遠とも思える時間でした。何一つ報われることのない。これが親を殺した子供の罪なのでしょうか。 叫び疲れて座り込んでいた私の膝の先に、また花が咲きました。 もう私には、母の罪を責める言葉を吐くこともできませんでした。 すると、母の花がつぶやいたのでした 『・・フ・・キ・・コ』 私の名前でした。この上なく優しい声で。呼ばれて初めて私は思い出しました。そんな風に母が私を呼んでくれていたことを。思えば私が生まれてから、私の家は不幸が続きました。父が病に倒れ、男手がなくなったところに凶作に見舞われ、すべての負担が母にのしかかりました。 生き延びることに必死だった母は、私にかまう暇などなかったのです。役にも立たない赤ん坊を生んでしまったのは後悔でしかなかったのでしょう。 それでも母は私を慈しんでくれていた。忘れていたのは私の方だった。 母の花が実をつけて、四方に飛び散っていきました。 すでに、百年の時が経っていました」
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