かとか

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 このコメント欄のどこかに院長がいたりして、と私が笑うとトーカも同じ笑顔を見せた。  コメントはなくとも、あのナイフ投げ名人の彼もここを見ているかもしれない。  呆れた目で流し見しているかもしれないし、私を蔑むポイントを探しているかもしれない。  けどもうそんなのどうでもよかった。 「なんとこの日のために新曲も用意してきたんですよ。さっそく一曲目から披露しちゃおうと思います。みんな、いいかな?」  私の声を掻き消さんばかりに文字の濁流がコメント欄を泡立てた。  彼の言うように、私は今調子に乗っている。ノリノリだ。  傲慢だっていい。私の花火でみんな沸け。  私は今、生きている。 「いつも私の歌を聴いてくれてありがとう。みんなのおかげで私は今日も歌えます」  ギターを抱え直して息を吸う。カメラを見つめて、目を閉じた。  可とか不可とか関係ない。過去も未来も関係ない。  今、この一瞬だけでいい。  彼らの瞳に焼き付けるほどの輝きを。 「それでは聴いてください。──『かとか』」 (了)
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