2人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
このコメント欄のどこかに院長がいたりして、と私が笑うとトーカも同じ笑顔を見せた。
コメントはなくとも、あのナイフ投げ名人の彼もここを見ているかもしれない。
呆れた目で流し見しているかもしれないし、私を蔑むポイントを探しているかもしれない。
けどもうそんなのどうでもよかった。
「なんとこの日のために新曲も用意してきたんですよ。さっそく一曲目から披露しちゃおうと思います。みんな、いいかな?」
私の声を掻き消さんばかりに文字の濁流がコメント欄を泡立てた。
彼の言うように、私は今調子に乗っている。ノリノリだ。
傲慢だっていい。私の花火でみんな沸け。
私は今、生きている。
「いつも私の歌を聴いてくれてありがとう。みんなのおかげで私は今日も歌えます」
ギターを抱え直して息を吸う。カメラを見つめて、目を閉じた。
可とか不可とか関係ない。過去も未来も関係ない。
今、この一瞬だけでいい。
彼らの瞳に焼き付けるほどの輝きを。
「それでは聴いてください。──『かとか』」
(了)
最初のコメントを投稿しよう!