2人が本棚に入れています
本棚に追加
可とか
『体調を崩したので今週の放送はお休みします。すみません』
送信ボタンをタップすると、私の文章がタイムラインに表示される。息をついてスマホをテーブルの上に置いた。
ベッドに横たわる私の腕から半透明の管が伸びている。
今まで放送を休んだことはなかったが仕方ない。こんな状態で演奏なんてできないし。
あれからすぐに駆け付けてくれた羽住さんに助けられて私はなんとか呼吸を取り戻した。脈も乱れていたようで「とにかく今は安静に」とのことだ。
来週のライブについても羽住さんは賛成しなかった。
「できるときに、できることをしてほしい」
ごもっともだ。そして今がそのときでないことくらい私でもわかる。
ひとまず今週の放送は休むことで話を収めたが、来週も再開できるかわからない。
結局、彼には返信していない。
返す言葉もなかったし、羽住さんにも止められた。そんなの相手にしなくていいと。
わかってる。急に現れた新人に対するやっかみなんて気にするだけ損だ。調子に乗ってるうんぬんは私ももう気にしていない。
それでも彼が雑に投げたナイフの一本が、私の急所に突き刺さっていた。
偶然だろう。私は自分の病気について公表していない。
だから彼は知りもしないはずだ。それがどれだけ私の欲しかったものか。
学校に行って、勉強をして、テストを受けて、部活動をがんばって、友達と恋バナして、ケンカして、仲直りして。
そんな普通の青春を送りたかったよ、私も。
やめちゃおうかな、このまま。
ふと暗い思いが脳裏をよぎる。
普通に生きてないと反論すら許されない。普通じゃないと認められないなら私はもう何もできない。
足りないものを突き付けられて傷を増やすだけだ。
最初のコメントを投稿しよう!