かとか

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かとか

 指で弦をはじくと、ぴゅんと音が転がり落ちた。  コメント欄に『ちゃんと聞こえるよー』と表示される。マイクの調子は上々のようだ。  私はひとつ息を吸った。 「さてさてみなさんこんばんは! ついにこの日が来ましたねー!」  画面の中のトーカが笑うと、法被が揺れて黒髪がさらりと流れた。  コメント欄が『待ってた!』『ついに!』『俺の火曜日!』とたくさんの投稿で溢れる。 「先週は急に休んじゃってごめんなさい。でもそのぶん今日がんばるので楽しんでいってくださいね!」  テンション高めに声を張る。また一段コメント欄が盛り上がる。  視聴者数は過去最高を記録していた。  火曜日の二十一時にこれだけ大勢が集まってくれただけでも嬉しいが、ここで満足するわけにはいかない。お祭りはこれからだ。  私がライブの決行を決めたとき、意外にも羽住さんは反対しなかった。 「やりたいの?」  ただ一言そう尋ねただけだ。できるの、ではなく、やりたいの、と。  私は彼女の目を見て頷いた。 「はい」 「うん。わかった」  そう言った翌日、羽住さんは病院の許可が下りたことを伝えてくれた。  今回に限っては二時間の放送を許してもらえたのだ。  最後に彼女は「院長からの伝言だけど」と付け加える。 「ライブ楽しみにしてますだって」 「もしかして院長フォロワー?」
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