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〜Ⅱ 女教皇〜
「今夜はごちそうさまでした。秀斗さんって、ちょっと軽い男性かなって思ったけど、子煩悩でいいお父さんなんですね。」
楽しいディナーが済み帰り道を歩く3人。はたからみれば仲の良い家族のようだ。このまま晴美に口づけをせずに帰ろうか・・・秀斗は迷っていた。しかし・・・
「あっそうだ。尚弥、もしかしたら部屋の鍵をかけ忘れたかもしれない。先に帰ってみてくれ。」
「えっ。それは大変。私も・・・」
尚弥と一緒に行こうとする晴美の手を掴み、
「尚弥。晴美さんとは大人の会話がある。独りで大丈夫だなっ。」
尚弥はこのあと晴美とふたりきりになり、口づけを交わす事はすぐに気づいた。秀斗が一か八かの賭けに出たんだと尚弥は自分も覚悟を決めた。
「わかった。ご両人ごゆっくり。」
そう告げると尚哉は暗闇に影を潜めた。
秀斗と晴美はふたりきりになり互いの話に花を咲かせた。
しばらくして・・・ふたりは人気のない路地へ。辺りを見回し秀斗は晴美の腕を引き寄せ・・・
「ごめんなさい。」
晴美は顔を背けた。
「秀斗さん・・・ラファエル。私・・・」
その途端、秀斗の記憶が少し蘇った。
「お前、ウリエル!なんで下界にいるんだ。まんまと騙されるところだった。」
晴美こと大天使ウリエルはラファエルの大親友で幼馴染だ。下界にラファエルがいる事を聞きつけわざわざ天空界から降りてきたのだ。
「私にキスしても無駄だってわかったでしょ!!」
「何しに来たんだ。俺は女房探しで忙しいんだ。お前とじゃれ合っている暇はない。」
本気で妻だと思い込んだ自分が、ラファエルは恥ずかしくてたまらなかった。
「実は、大神ゼウスからちょっとした情報を得てね。」
そうウリエルが言うやいなや、一人の女性の写真を見せた。
「これが貴方の奥さんよ。」
写真には知的で優しそうな女性が写っていた。髪は長く瞳は大きく化粧が似合う趣きだ。
「余計な事を。礼は言わないぞ。」
写真を手にした秀斗からは涙が溢れていた。
秀斗にとっては女房はかけがえのない存在だったと懐かしい記憶を呼び起こしていた。
「せっかく貴方の為に下界へ来たから奥さん探しのお手伝いをしてあげるわよ。そうと決まれば、早く尚弥君の元に帰りましょう。」
尚弥の母親探しに助っ人が加わり、これからの3人の旅路はどうなることやら・・・辺りはもう夜が明けていた。
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