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〜Ⅵ 恋人たち〜
あくる週の日曜日、約束通り教会に行くと女性の牧師が待っていた。いつもの牧師の装いとは違いジャケットにTシャツ、下はジーパンにスニーカーとカジュアルな着こなしをしていた。
「待たせたようだね。」
牧師の姿にちょっと引け目な秀斗だった。それもそのはず秀斗の一番苦手な姿をしてたからだ。
秀斗の好みは昔ならではのワンピースにスカート、足元はパンプスかヒール姿だからだ。
しかしあくまでのそれは外見であり、牧師の中身は充分好みの対象である。
「秀斗さん。奥さま探しって言ってましたけど・・・」
早速牧師は本題を聞いてきた。だが、なんとなくいつもと違う。おかしい。牧師はまるで笑いをこらえているように秀斗の目には映った。
「牧師さん。牧師さんの名前を教えて欲しい。」
「貴方の良く知ってる名前ですよ。」
牧師はそう告げると背中から羽が広がった。
「・・・アリエル。」
秀斗の様子を天空界から見守っていたが、女房探しが難航しているのをみるに見かねて、とある情報を持って秀斗に会えるのを待っていたのだ。
「お前それでも天使か?私の正体くらいすぐに気付けよ。」
そうだ。牧師は大天使アリエルである。
「大神ゼウスから情報を手に入れて来てやったよ。早く見つけてやらないと、尚弥君が可哀想じゃないか!」
アリエルは1枚の紙切れを秀斗に渡した。
『菅野亜香里(スガノアカリ)』
紙切れには尚弥の母親・・・秀斗の女房の名前が書かれていた。
名前を見た途端、秀斗は何故自分の目の前から女房・・亜香里がいなくなったか思い出し始めた。
それと同時にまたもや涙が滴り落ちた。
「ウリエルも協力しているのだろう。私も力になるよ。そうと決まれば、ウリエルと尚弥君の所へ行こう。」
アリエルは秀斗の肩に手を回し、
「残念だったな。私とキス出来なくて?!」
秀斗にとってアリエルも幼馴染みだが、ちょっと厄介な助っ人だった。
3人の大天使と少年の母親探しは梅雨空にヒントがありそうだ。
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