二酸化炭素

1/1
前へ
/14ページ
次へ

二酸化炭素

 もし日射量の条件が同じならば、大気中のCO2濃度が高いほど、その温室効果により、氷河の拡大が起きにくく、したがって、氷期への突入が起きにくい。  産業革命前のCO2濃度は280ppm程度であったと考えられるが、これがもしも、少し低い240ppmであったら、氷期が始まっていたかもしれない。  では、産業革命前にCO2濃度が少し高かったのは、人類の仕業かというと、どうもこれはよくわからない。  産業革命前の人間活動によるCO2濃度への影響にはさまざまな見積もりがあるらしい。  ある見積りによれば、人類が農耕を開始して、森林を切り開くことにより大気中にCO2を排出し、産業革命が起きるよりも前にCO2濃度を40ppm程度増加させていてもおかしくないそうだ。  つまり、自然の状態ならば産業革命前のCO2濃度は240ppmだったものが、人間活動により280ppmに増加していたかもしれないというのである。  もしもこれが正しかったとすると、我々の祖先が知らずに行った自然への介入が、その後の我々の生きる気候に天と地ほどの差をもたらしているということになる。  我々は彼らに感謝すべきかもしれない。  ところで、近現代の人類も、もちろん、大規模な自然への介入 (ここでは主として化石燃料の採掘と燃焼)を行い、大気中のCO2濃度を増加させ続けている。  かつて280ppmだったCO2濃度は今や400ppmを超え、当分の間は氷期の始まりようがない状態といってよい。  では、ずっと先はどうだろうか。  実は、次に氷期が始まりうるタイミングが訪れるのは、およそ5万年後である。  今の人類が大気に排出したCO2は、それまでに海や陸上生態系に吸収されていくが、ある程度の影響は残る。  人類がトータルで1兆トンの炭素 (3.7兆トンのCO2)を大気に注入したとすると、大気に残ったCO2の温室効果により、5万年後の氷期も訪れない可能性が高くなる。  人類はすでに0.5兆トン以上の炭素を大気に注入しており、パリ協定の目標が達成できたとして、トータルで排出される炭素は1兆トン弱になるだろう。  今の人類は地球温暖化問題を起こしてしまったが、この問題をなんとか乗り越えて文明を存続させ続けたら、5万年後の氷期を止めたことによって、そのころの子孫たちには感謝されるかもしれない。  もっとも、5万年後の人類は地球の気候などやすやすと制御できているかもしれないし、あるいは宇宙に出ていってしまっているかもしれないが。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加