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4.フラグメント
叩き付けられる音の洪水を浴びながら、今日も僕はここにいる。
モニターに足を乗せたカケルが煽るようにギターを激しく掻き鳴らす、それに呼応するようにフロアの熱気が上昇する様に満足気に嬉しそうに頷く。
心臓の高鳴りと重なり合っているのかと錯覚してしまう、アサヒのずっしりと重いドラム。
涼しい顔で7弦ベースを流れるようにメロディアスに深く刻む、そのプレイはハルをさらに華麗に映す。
その全てを受け取り、打ち震える心をそのまま僕の魂ごと唄声とともに叩きつけていく。
絡らむ声、交ざる視線、零れ落ちていく笑顔たち――あぁ、生きている……生かされている――やっと実感できた。世界は色付いていることに。
全身から落ち続けるこの汗さえも気持ちよく感じてしまう。この熱さはライトなのか、メンバー、それともフロアの止まない気持ちなのか、ごちゃ混ぜなこの空間が何より僕にとって掛け替えのないモノになっていた。
「僕はバンドを始めるまで生きづらく……上手く息が出来なかった。ずっと孤独で笑い方も忘れてしまっていたかな……。でも今はライブに来てくれる皆、メンバーのお陰で僕は幸せです、本当にありがとう。……かつての自分へ、そして同じ苦しみを持つアナタへ、一人でも多く届くように願いを込めて歌います。『moment』」
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