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第一章
ドン!ドン!ドン!
その音は、朝の静寂を破るように響き渡った。
「真人!出て来なさい!
いつまでそうしているつもりなんだ!
いい加減にしないか!」
部屋のドアを乱暴に叩く。
7時ちょっと過ぎ。
朝食前の少し空いた時間。
真人(マコト)とは私の息子の名前だ。
公立中学に通う二年生だ。
部屋に引き篭もってから一年が経つ。
学校でのイジメが原因らしい。
本人は何も語らないので、傷だらけの顔や汚れた制服からでしか判断出来ないのだが、おそらくそう言う事だろう。
一年前、私は無理矢理ドアをこじ開けて引き摺り出そうとした。
しかし、真人が木製バットを振り回し、激しく抵抗した為に出す事が出来なかった。
あの時の真人の恐怖に引き攣った顔は、今でも覚えている。
下手に彼を刺激したら命を絶つかもしれない。
だからその後は、毎日こうやって声をかけて様子を見ているだけにしている。
時々ドアの前で熱く語ってはみたものの、寝ているのか、まるで反応がなかった。
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