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6.
それからというもの、両親の仲は日が経つにつれ、悪化した。
顔を見合わせれば怒鳴り合い、そんな両親が見たくなくて、そして、自分のことを見て欲しくて話しかけようとするが、八つ当たりをするように手を上げられたりもした。
こんな家にいたくない。
家を早々に出た百寧は一人、とぼとぼと歩いていた。
学校がある日は学校で時間が潰せるが、休日だとどうにもならない。
せめて友人の家にでも行って、時間を潰そうか。
そう思いたった百寧は友人の家へ向かおうとした、その時。
ぶわっと全身に鳥肌が立った。
急に何が起きたのか分からなかった。
寒い時期でもないのになんでこんなにも寒気が。なに、なんなの。
疑問符でいっぱいになりながらも腕を擦っていると、急激に体温が上がっていくような熱さを覚えたのと同時に、壊れそうなほど心臓がバクバクと高鳴った。
それが段々と息ができないほど鼓動が速まり、立っていられなくなった百寧は、その場に座り込むこととなった。
苦しい。熱い。この感じはなに。
熱が急に出たのかもしれない。両親があのようなことになってからまともに寝れていなかったから。
けれども、熱の時とは違うような気がしてならなかった。
だけど、なんだろう、この感じ。とても嫌なように思えるけど、どこか心地よい⋯⋯。
雲の上を歩いているような、海を浮いているような、そんなふわふわとしたような感覚。
そして、無数の羽根で全身を撫でられているようなむず痒さも覚え、身を震わす。
だが、その時服が擦れ、言いようもない感覚に襲われた時は、どうしたらいいのかと不安を覚え始めた。
自分が自分ではなくなっていくような。
身体が風船のように軽くなってしまって、地面に留めておきたくて掴もうとするのに掴み損ねて飛んでいってしまうような奇妙な不安。
「⋯⋯何でこんなところで」
「⋯⋯本当に嫌ね」
たまたま通りかかった人達がそう言って、百寧のことを嫌悪し、蔑むような目で見ていた。
それは両親に向けられる目と同じだった。けど。
誰か。誰か助けて欲しい。
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