7.

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「⋯⋯こんなところで座り込んでどうしたの?」 息をするのもやっとな百寧に声をかけてくる者がいた。 目の前がぐらつきながらもその声がした方へ振り向くと、二十代程度の男性が目線を合わせるように顔を覗き込んできた。 助けに来てくれた。 両親のいさかいの時、一晩中あれほど祈り続けたのにその願いは届かずじまいだったのが、今は少ししか祈ってないのにこうして助けに来てくれた。 「⋯⋯ぁ⋯⋯っ、も、もね⋯⋯」 「君、もしかしてオメガ?」 え、という掠れた声で声が漏れた。 どうして分かったのだろう。 「な、なんで⋯⋯」 「だって、君からとてもいい匂いするから」 「いい、匂い⋯⋯」 「⋯⋯こんなところにまだ番になってないオメガが、しかもこんな可愛い子を⋯⋯ラッキーだな⋯⋯犯し甲斐がある」 首辺りに顔を近づけ、すん、と嗅いだかと思えば、そのような独り言を呟く。 先ほどよりも荒い男性の息遣いが肌に当たった時、身が震える。 気持ちいい。もっと触れて欲しい。 見知らぬ人に普通は顔を近づけられただけでも気持ち悪いと思うはずだ。それなのに、今はそんな甘い思考へと陥ってしまった。 「⋯⋯違うところに行こうか。立てる?」 「あ、⋯⋯うう、ん⋯⋯」 何とか答えると、ひょいと抱っこされた。 さっきよりも男性と密着し、その服越しからも伝わる温もりにじんわりと熱くなった。 人の温もりを感じるのが遠い昔のように思えるぐらい久方ぶりで、力の入らない腕で男性の首へと回し、擦り寄せた。 くすぐったいと笑い声混じりに言う男性がどこかへ行こうとしていた。 どこに連れて行ってくれるのか。自分の家以外であればどこでもいい。 あんなずっと嫌な声で言い合って、百寧の顔を見るなり手を上げる家以外ならば。
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