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1ー2 決意
「大丈夫ですか?レリアス様」
ボロボロになった僕にお湯をかけながらローザは、ため息をつく。
ローザは、僕がいる娼館の女主人だ。
燃えるような赤毛に緑の目をしている彼女は、ラクウェル兄による反乱後、僕を引き取ってくれた忠臣だ。
もと、騎士団の副団長だった彼女は、ラクウェル兄が反乱を起こす前に騎士団を退団しこのスラムに娼館を開いた。
そして、ラクウェル兄の後押しもあり今では、王都ラキサスを裏から支配している闇の首領だった。
貴族の令嬢であったローザがすべてを捨てて裏の世界の住人になったのは、ラクウェル兄の命令もあったが、多くは、僕やリリアンを守るためでもあった。
ラクウェル兄が3年前に反乱を起こしたとき、ほとんどの王族が処刑された。
今では、残っているのは僕とリリアンだけだった。
ラクウェル兄は、僕を殺さずに性奴としてローザのもとに堕とすと、こうして時々、僕を苛みにきた。
それでも僕は、リリアンのために生きることを選んだ。
リリアンは、僕の年の離れた妹だ。
そして、生まれながらの聖女。
このシュテルツ王国では、代々、王は、聖女を娶ることになっている。
ラクウェル兄は、王族をほぼ皆殺してしまったので今残された聖女は、リリアンだけだった。
「まさか、王がリリアン様を妃に迎えられるとは」
ローザが僕の体を洗い流してくれる間、僕は、黙って考え込んでいた。
このシュテルツ王国では、兄弟姉妹での婚姻は、尊いものとされている。
だけど。
僕は、リリアンをラクウェル兄の花嫁にはしたくはなかった。
せめてリリアンには、幸せになって欲しい。
そう、思って堪えてきたのに。
僕は、ぎりっと唇を噛んだ。
なんとかしなくてはならない。
だって、リリアンは、まだ、17歳で魔法学園の学生だ。
僕は、リリアンが魔法学園を卒業するまでに彼女をよその国に逃がすつもりだった。
それを見越したかのようなラクウェル兄の言葉に僕は、決意していた。
聖女がいないなら、召喚すればいい。
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