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2ー8 乱入者
「それは・・誤解、だ」
僕は、テシガアラの手を払い退けた。
「僕は、自分の勝手な都合で君のこと無理矢理この世界に呼び寄せた。しかも、君をラクウェル兄上とのことに巻き込んでしまった」
「いいんだ!」
テシガアラが僕の手をもう一度握り絞めた。
「もっと巻き込んでくれよ!どんどん巻き込んで、そして、俺を頼ってくれ!」
僕は、テシガアラから目が離せなかった。
「確かに、俺は、この世界のこと、まだ不馴れだし、レリアス、さんからしたら未熟者なのかもしれない」
テシガアラは、僕の目を見つめて訴えた。
「それでも!きっと、俺が君を、レリアス、さんのことを救ってみせるから。だから!」
僕は、いつしか涙ぐんでいた。
今まで、僕にこんな風に接してくれた人はいなかった。
こんなに。
懸命に、僕を思ってくれた人は、テシガアラの他には、いなかった。
僕の頬を涙が伝い落ちる。
「俺がレリアス、さんのこと好きなぐらい、レリアス、さんにも俺のこと好きになって欲しい」
僕は、泣きながら頷いていた。
こんなにも僕を思いやってくれる人がいたなんて。
こんな汚れた僕を好きになってくれる人が。
テシガアラは、泣いている僕を見て急にアワアワし始めた。
「な、なんで泣くんだ?レリアス、さん?」
「レリアスでいいよ」
僕は、涙を拭いながら微笑んだ。
「僕も、君が好きだよ、テシガアラ」
「ほ、んとに?」
テシガアラが僕を見て硬直した。
そして。
ぶわっと顔が赤くなる。
耳まで赤くなっているのを見て僕が笑うと、テシガアラが一瞬、息を飲んで。
次の瞬間、テシガアラは、花の蕾が綻ぶように微笑んだ。
「よかった」
僕は、思わずテシガアラに見とれてしまった。
彼は、これほどにも美しかったのか。
いや。
彼が美しいことは、わかっていた。
でも。
こんなにも胸が騒ぐほどに美しいなんて僕は、知らなかった。
「俺、嬉しいよ、レリアス!」
テシガアラが僕のことを抱き締めた。
そのとき。
ドアがいきなり開かれたかと思うと、短剣を構えた銀髪の少女が飛び込んできた。
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