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2ー9 囲い者
「レリアスお兄様に触れないで!」
短剣をテシガアラに突きつけてリリアンは、叫んだ。
テシガアラが驚いて僕をかばうように前に身を乗り出した。
「誰だ?お前」
「あなたこそ、名を名乗りなさい!」
リリアンが短剣の先をテシガアラに突きつけて彼を睨んだ。
「レリアスお兄様に不埒なことをしようなんて!許しません!」
「リリアン?」
僕は、リリアンに呼び掛けたが、リリアンは、聞く耳を持たない。
僕は、とにかく二人を止めようと思ってテシガアラとリリアンの間に入ろうとした。
「落ち着いて!リリアン。テシガアラは、僕の友だち、だよ!」
「友だち?」
リリアンが僕の方を見た。
僕は、頷く。
「そう、友だち」
背後でちっ、という舌打ちみたいな音が聞こえたような気がしたけど、きっと気のせいだよね。
リリアンが短剣を下ろした。
「そうなのですか。私、てっきりレリアスお兄様がこの方を囲い者にしたのかと誤解しておりましたわ」
「誤解じゃないけど」
テシガアラが背後から僕を抱き寄せた。
「ども。始めまして。レリアスの囲い者の勅使河原 元です」
「レリアス、お兄様?」
リリアンが怖い笑みを浮かべて僕を見た。
「本当ですの?この男のいうことは」
「ち、がうことは、ないけど、誤解だ!」
僕は、リリアンに必死で説明した。
僕が聖女召喚を行い、失敗したこと。
その結果、テシガアラを召喚してしまったこと。
テシガアラが異世界人であること。
そして、ラクウェル兄にテシガアラが狙われていること。
リリアンは、黙って僕の話をきいていたが、僕が話し終えると強ばった笑顔で訊ねた。
「で?この男は、レリアスお兄様のこと抱きましたの?」
はいぃっ?
僕は、リリアンの言葉に衝撃を受けていた。
あの可愛かったリリアンが。
幼い頃から内気で、僕にだけ懐いていたあのリリアンが?
「はっきりお言いなさいな!このろくでなしが!」
「リリアン?」
僕は、リリアンの口から出てくる信じられない言葉の数々に驚いていた。
リリアンは、僕にかまわずテシガアラにきいた。
「レリアスお兄様のこと、騙して金づるにしようとしているんでしょう?この悪党!」
「だから、何?」
テシガアラが僕を抱いたままリリアンを挑発する。
「悔しかったら自分もレリアスのこと、抱いてみろっての」
いや。
僕は、ひきつった笑みを浮かべていた。
僕たち、決してそんな関係じゃなかったよね?テシガアラ
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