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2ー10 仲良し
「そういうわけで」
僕は、リリアンになんとか事情を説明した。
リリアンは、可愛らしく笑って首を傾げた。
「ごめんなさい、レリアスお兄様。それに勅使河原も」
うん?
なんか、引っ掛かる感じ?
だが、リリアンは、いつものように変わらず無垢な笑顔を浮かべている。
「私、てっきりレリアスお兄様に悪い虫、いえ、その変な男に騙されているのかと誤解してしまいましたわ」
おかしい。
リリアンは、微笑んでいるのになぜだろう。
目が笑ってないような気がする。
「ところで、なぜ、勅使河原は、さっきからレリアスお兄様のことを抱き締めているのですか?」
「こ、これは」
僕が戸惑っていると、耳元でテシガアラがささやいた。
「俺は、君がレリアスの妹とは知らなかったんでね。何かあったら、すぐにレリアスをかばえるようにと思っていただけだ」
「まあ!」
リリアンが眉をつり上げた。
「では、もう、大丈夫なので離れてくださいませ」
「ちっ!」
ええっ?
僕は、信じられない気持ちでテシガアラを振り向いた。
舌打ち、したよね?
今度こそ、ほんとに!
テシガアラは、僕から離れるとにっこりと口許を歪める。
「驚かしてすまなかった、レリアス」
テシガアラは、立ち上がるとリリアンの方へと近づいていった。
「少し、話せませんか?お嬢さん」
「いいですわよ、勅使河原さん」
二人は、僕から離れると部屋の隅に行くと何やらぼそぼそと話し始めた。
僕は、一人取り残されていた。
でも。
男性が苦手だったリリアンが、その、なんというか、たくま、いや、元気になって。
これも寮生活を送りながら魔法学園で学んできたからだろうか。
お兄さんは、少し、安心したよ。
でも。
テシガアラとかなり話し込んでいるリリアンに僕は、嬉しいような不安なような気持ちになっていた。
しばらく話してから二人は、僕のもとへと戻ってきた。
「事情は、理解できましたわ、レリアスお兄様」
リリアンがうっすらと涙ぐんでいる。
「もう、心配しないで。私とこのテシガアラがこれからは、ラクウェルのやつ、いえ、ラクウェルお兄様からレリアスお兄様をお守りいたしますわ!」
「そうだな」
テシガアラがうんうん、と頷く。
「俺たちに任せろ!レリアス」
うん?
僕は、二人の変わりように不安を覚えていたが、同時に、安心もしていた。
こんなに仲良しになるなんて。
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