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1ー3 魔導具
「聖女召喚ですか?」
ローザは、僕の決意に驚きを隠せなかった。
聖女召喚。
それは、古代より王家に伝わる秘術だ。
異世界より聖女を召喚するこの術は、王の血筋を引く魔導師のみが行うことができる魔法だった。
僕は、こうなる前は、王国の魔法師団に所属している魔導師だった。
ラクウェル兄の性奴にされるとき、自ら魔法を封じ、さらに兄の命でこの身に淫紋を刻んだ。
だが。
僕は、将来を見込んで保険をかけていた。
もし、ラクウェル兄がリリアンに危害を加えようとしたときには、僕が自分の手で僕自身にかけた封印を一部解除できるというものだ。
それは、聖女召喚のための力だった。
リリアンは、聖女としてあまり力があるとはいえない。
だけど、異世界から召喚された聖女は、違う。
異世界から召喚される聖女は、たいていは、強力な力を持っている。
その聖女なら僕にかけられた封印を完全に解除することもできるだろう。
だが、聖女召喚は、術者にとっては命がけの魔法だ。
ローザが驚くのも無理はない。
だけど、もし、この秘術を使うなら今しかない。
僕は、ローザに頼んで術に必要なものを集めてもらうことにした。
もちろん、ラクウェル兄に知られないように。
もし、知られたら今度こそ僕の命はない。
僕は、ローザに清められた体を布で拭くと服を身に付けた。
昨夜のラクウェル兄との情事のせいで全身が軋み悲鳴をあげているが、休んでなんていられない。
僕は、茶色のローブをはおると王城の近くにある王家の別邸だった屋敷跡へと向かった。
そこは、僕とリリアンが幼い頃に暮らした家だ。
僕とリリアンの母は、身分が低かったため正妻であるラクウェル兄の母から疎まれていた。
そのため、僕たちは、王城から離れたこの屋敷に住んでいたんだ。
王族の屋敷としてはみすぼらしかったが、僕たち家族にとっては、何よりも幸せな記憶の残る場所だった。
だが、それも今では、廃墟となっていた。
ラクウェル兄が反乱を起こした時にこの別邸は、焼き落とされた。
僕は、ローザのもとに行ってからもたまにここを訪れていた。
建物の跡しか残らない廃墟となった思い出の地で悲しみに浸るために。
だけど、今日は、違う。
僕は、焼け落ちた屋敷の中へと入っていくとかつて僕の部屋だった辺りの床を探った。
そこには、床下に通じる穴があった。
そこに僕は、鞄を隠していた。
それは、僕がかつて造っていた空間収納の魔導具だ。
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