1 魔王召喚

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 1ー6 美しい男  「うぅっ・・」  僕が涙を流しながら頷くのを見てその男は、僕の下腹にそっと触れた。  そこには、赤く輝く淫紋がある。  男は、そこに自分の魔力を注ぎ込んだ。  その瞬間、僕の目の前には金色の星が飛んだ。  「あぁっっっ!」  僕は、のたうちながら天に向かって白濁を放った。  そして、僕は、意識を手放した。  浅い眠りの中。  僕は、漂っていた。  鼻をくすぐるような焼きたてのパンのいい香りがしている。  僕は、空腹と喉の乾きを感じて目覚めた。  「んぅっ・・」  「気がついたのか?」  耳から侵食されるような響きのいい声がきこえて僕は、そっちを見た。  そこには、神が造った彫刻のような美しい青年がたたずんでいた。  見慣れない衣装を身にまとったその青年は、手を伸ばして僕の頬に触れてきた。  その瞬間、電流が流れるように僕の体が跳ねた。  「ふぁっ!」  涙目で見つめる僕に男は、困った様子で慌てて手をひく。  「すまない。驚かせたか?」  「いえっ・・!」  僕は、はっとして体を起こした。  僕、確か、聖女召喚をして。  なんだか、体がおかしくなって。  全部脱いでた。  僕は、ちらっと自分の体を見た。  白い粗末な夜着を身に付けている。  少しほっとしている僕に男が困惑したようにきいた。  「あの、目が覚めたところでききたいんだけど」  男が僕をじっと見つめた。  「ここは、どこなんだ?」  「あっ!すみません!」  僕は、ベッドの上に正座すると、男に事の次第を話した。  といっても聖女召喚した結果、なぜか、彼が召喚されてしまったということぐらいしか僕には、話せなかったんだが。  男は、しばらく僕の話をきいていたが低く呻いた。  「聖女、召喚?」  「はい」  僕は、なんだか彼に申し訳なくなっていたたまれなかった。  だって。  あきらかにこれは、失敗だった。  だって、聖女どころか、男、だし。  「つまり、俺は、間違えてここに召喚されたってことか?」  男は、僕に訊ねた。  「もちろん、すぐにもとの世界に戻してくれるんだろうな?」  「それが・・」  僕は、男から視線をそらした。  「少し・・というか、ちょっと、その、時間がかかるかと」  僕の今の力だともう、秘術を使うことはできそうにない。  魔力を増幅する秘薬ももうないし。  でも、もしかしたら、しばらく時間を置けば魔力が回復して術を執り行うこともできるかも。  僕がそう話すと男が納得した様子で頷く。  「わかった」    
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