1 魔王召喚

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 1ー9 躾直し  「テシガアラは、関係ない。しばらくローザの・・ここの主のもとに行っててくれないか」  僕は、風呂からあがると男たちに体を拭かれながらテシガアラに話した。  テシガアラは、ぎょっとした表情で僕の事を見た。  「もしかして、これからあんたがお仕置きされるから、か?」  「そうだ」  僕は、頷いた。  「君は、ここにいない方がいい」  「そりゃ、そうかもしれないけど」  僕は、不満そうなテシガアラに笑いかける。  「それとも、見ていたいの?」  「お前、嫌なことされるんだろ?」  テシガアラが怒りを隠すことなく僕に詰め寄る。  「なんで、逆らわないわけ?」  「逆らわないんじゃない」  僕は、裸のままテシガアラと向かい合った。  「逆らえないんだ」  「逆らえない?」  僕は、頷くと、下腹に刻まれた淫紋を指す。  「僕は、3年前からあの人の奴隷、だから」  「奴隷、だって?」  まだ何か言いたそうなテシガアラを僕は、どん、と突き放すように押した。  「君の世界にだって奴隷ぐらいいたんだろう?」  珍しくもない。  奴隷の僕が主人であるラクウェル兄にお仕置きされるぐらい、なんてこともない。  だが。  テシガアラは、僕の肩をぐっと掴むと僕のことを真摯に見つめた。  「間違ってるよ!レリアス君が酷い目にあわされるなんて」  「なら、どうしたらいいと?」  僕は、ふん、と鼻で笑うとテシガアラの手を振りほどく。  「君が僕を救ってくれるのか?」  「救う。救ってみせる!」  テシガアラが僕を見つめて言いきった。  「俺が、君を救ってやる!」  「誰が、誰を救うって?」  ドアが開いてラクウェル兄が戻ってきた。  僕は、テシガアラを押し退けるとラクウェル兄の前に出て跪く。  「気にしないでくださいませ、ラクウェル、様」  僕は、笑顔でラクウェル兄を見上げた。  「この者は、まだ、この世界のことがよくわかっていないのです。どうか、お許しを」  「異世界人、か」  ラクウェル兄がにやっと笑った。  「まあ、いいだろう。特別に許してやる」  僕は、ほっと胸を撫で下ろした。  ラクウェル兄にテシガアラが殺されたりしなくてよかった。  突然、この世界に召喚された上に、殺されたりしたら寝覚めが悪い。  「お前、そこで見ていろ」  ラクウェル兄は、テシガアラに向かって命じたので、僕は、ぎょっとしてしまった。  「ラクウェル、様?」  「そこで立ってこいつが」  ラクウェル兄が僕の顎に手を添えて僕を引き寄せた。  「躾直されるところを見ているがいい」  
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