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「はい?」
谷内は間抜けな声を上げた。
卒業式が終わり下校時刻から一時間半後の12時、裏門で谷内と古地が向き合っていた。
「だからコレ!あげる。本当に今までありがとう!」
古地はカラフルな紙に包まれたA4サイズ程度の箱を谷内に渡したのだ。
「あ、え?えぇ〜?」
谷内は悟った。
察しの悪い谷内にでも理解できた。
『コレは愛の告白じゃなあい!!』
その答え合わせはすぐにできた。
「ナハハハ…愛の告白でもなんでもないのに…ただお礼するだけでも…なんかこう恥ずかしいね!とにかくありがと!魔王、電車通学でしょ?」
「…あ、あぁ…そうだね…」
谷内の心は打ち砕かれた。
はっきりと聞こえてしまったのだ。
アイノコクハクデモナンデモナイノニ…
「じゃあ駅で一緒になるかもだね!また会えるといいなぁ!」
古地の天真爛漫な笑顔が谷内の傷口に塩を塗り込んでいく。
「…ん…お…。」
「じゃあね!!また会おうね!!」
「…あー…。」
古地は走ってその場から消えた。
谷内の視界が歪んでいく。
「会っても…どうにもなんないだろ…」
谷内は自宅の方向へと歩き始めた。
『俺は勘違いしてたな…』
谷内の両目から涙が溢れてきた。
『俺は高ちゃんとかと一緒に過ごして、長い時間一緒にいてさ、勘違いしちゃってた。』
「ウッ…フゥ…」
顔が歪んでいく。
涙と声を抑えようにも自分の力ではどうにもならない。
『俺は勘違いしてた…俺は高ちゃんと同じステージになんか立っていない。』
「ハァハァ…く、くそぅ…なんで俺は…」
『俺は』
「俺は…」
『ただの』
「ただの…」
『雑魚だ』
「ザコだったんだぁああああ〜!!!!うぉぉぉあああ!!!」
谷内は叫びながら太った体を揺らして走って消えた。
箱の中身はチョコレートだった。
甘いはずのチョコレートはとても苦く、とても悲しい味がした。
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