高校生〜天使の微笑

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時は流れた。 そして時は来た。 夜八時アルバイトを終えた谷内は自転車で帰宅中、裏路地にあるコンビニに入った。 「寒い寒い…たまらん…。」 季節は高校二年生の三月、まだまだ寒い。 コンビニで甘い缶コーヒーを買って外に出ると温かい缶コーヒーを開けてゴクリと飲んだ。 「はぁ~。あったけぇ。ん?」 谷内のポケットの中でブーブーとポケベルが振動している。 「お?亮子か?」 気取って言うが実際谷内とポケベルでやり取りをしている者など中学校時代の仲間が二人と、古地の三人だけだ。 「亮子だ。」 嬉しそうに谷内は画面を見て数字を眺めると、みるみる顔色が変わっていく。 そうしている間に次から次へとメッセージが入ってくる。 コウコウニネンニシテハツカレシガデキタ! キノウコクハクサレチャッタ! モトカラスコシスキダッタンダケド ツキアウコトニシマシタ! オナジバスケブノセンパイ モウソツギョウシタラアエナクナルカラッテ コクハクサレタノ! ヤサシクテカッコイインダヨ! 「亮子…」 谷内は缶コーヒー落としてしまい、その場に両膝を着いた。 「お前は…色々いるんだろうけど…」 谷内は唇を震わせて言葉を絞り出していく。 「俺にはお前しかいないんだよ…。」 再びポケベルがブーブーと振動した。 恐る恐る谷内は画面を見ようとした。 「俺はずっと昔からお前しかいないんだよ…」 谷内は意を決してポケベルの画面を見た。 谷内はこの時の衝撃を今でもよく覚えているという。 ビックリシタ! アタシモスキッテツタエタラサ キスサレチャッタ! キャアアア! 「キスされちゃった」 「キスサレチャッタ」 「きすされちゃた」 「KISS SARECHATTA」 「kiss sarechatta」 「223331944281434168」 「嘘…」 まるで水をすくうようにポケベルを両手の平に置いたまま谷内は涙を流した。 自分の手のひらから蝶のようにヒラヒラと飛び立っていく古地が幻のように見えた。 いつまでも行動しない自分の元から古地が消えていく未来は見えていた。 しかしそれはどこかリアリティーを感じていなかった。 そしてそれはどこか遠い未来なのだろうと根拠も無く考えていた。 しかし、その時は来た。 突然に来たのだ。 楽観的に考えれば考えているほど、その落差は大きい。 「そうかぁ…よ、良かったなぁ…亮子よぉ…」 溢れ出てくる涙を拭いながら谷内は立ち上がった。 そしてコンビニの正面にある公衆電話にテレホンカードを挿入して古地に返事を打った。 首元に入っていく涙が谷内の全身を冷やしていく。 ヨカッタネ! オシアワセニ! コレカラサ エキマデイッショイクノトカ ミンナデカラオケイクノハ ヤメヨウ
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