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谷内の提案を古地は快諾した。
付き合いたての幼い恋である。
当たり前のことかもしれない。
自分は勘違いをしやすい上に、行動に移そうとしないという手が付けられないほどのポンコツだということを谷内は深く自覚した。
谷内はまだこの時、一番大切なことを理解していなかった。
「待つことしかできない人間は待つしかないんだよ。いつまでもね、いつまでも。それにさ、早く気が付いていればね。」
現在の谷内はそう語る。
「あの時何か行動に移していたら…そう…もう思わないようにしてるよ。もう何もかもが手遅れだから。ハハハ!もうさ!全部…今までの時間が全部夢だったらいいのにな!」
谷内はそう笑う。
谷内の高校最後の一年間は人生の中で最も暗く、最も辛く、最も苦しい期間だった。
そして谷内は高校を卒業し、家を出た。
自宅から40kmほど離れた企業に就職し、寮暮らしを始めたのだ。
高校卒業し、すぐに社会に放り出された谷内は辛いことの連続だった。
今では考えられないようなスパルタ新人教育を受け、社会人一年目が過ぎる頃には体重も激減し、目つきも変わった。
そうして恋人どころか友人もいない谷内の闇は着々とその面積を広げていったのだった。
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