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回らない頭でそう声をかける。
まだ声が出にくいだとか頭が回らないだとか、そういうことはなんとかなる。ただ、視界が歪むのと頭痛とは耐えられるかどうか微妙だ。
意識せずとも眉間に皺がよる。
「何、嫌?俺にも仕事あるし、時間だってないんだけど。」
言い方が悪いのはわかってる。
でも、こういう言い方じゃなきゃ元凶であろうこいつからは離れられない。
この体調も、治すどころか酷くなる一方だろうし、診察も終わらない。
怪我しないくらいの力で首輪を引っ張る。
嫌そうな顔をしていたが、今の俺にはそんなものすら見えなかった。
「……っ」
まだまともに働く耳がその声を拾ったとき、頭に殴られたような痛みが走った。身体が覚えているその痛みに、今回ばかりは救われた。
普通の、いつもの俺を取り戻せたから。
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