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彼女の名前……実名は出せないから……コホッ、コホッ、ルリちゃんにしておこうか。高校一年生の時に同じクラスになったんだ。そしてたまたま、同じ美化委員会になってさ。その仕事が、生徒玄関とか中庭とかの掃除だったのね。ゴミ拾ったり、草むしりしたり。そうすると、手を動かしながら世間話するようになるじゃん? それが仲良くなったきっかけ。
ルリちゃんの見た目? 色白で、黒髪ロング。運動は中の下くらいだけど、頭はよかったよ。上の中くらい。俺と正反対。俺はどっちかっていうと実技系科目が得意だったし。ルリちゃん紹介してくれ? ――ゲホッゲホッ、セック……は禁止ワードだぞ! つーか、会ってもいない女の子に欲情すんな! どんだけ飢えてんだよ!
ルリちゃんは、すごいおっとりしてる子でさ、話してると落ち着いたんだよ。俺が草で手を切った時は絆創膏くれてさ。逆に俺は、力仕事や刃物仕事をしてた。草を切るハサミって何て言うんだっけ? コホン、んんー。え? 普通に草切りハサミでいいの? ありがとう。
告白は、まあ俺からだった。俯き加減で、コクリと頷いてくれたルリちゃん、可愛かったよ。
映画観たり、喫茶店やファミレスでご飯食べたり、ふつうの高校生カップルだった。
というか、胸糞だって言ってるのに、こんなに視聴者伸びるんだな……。いやほんと、おめでとうの一言くれたら、解散していいからね!
付き合って一か月経ったころかな、ルリちゃんに嫌がらせが始まったんだよ。机にゴミ入れられたり、教科書捨てられたり。酷いのは、靴箱にナイフが入ってたんだよ。しかもさ、刃先が正面向きで。わざわざ固定してるんだよ。
俺はルリちゃんに申し訳なくなったよ。「ケントと別れろ」って書きなぐられたメモが入ってたんだよ。ルリちゃんの下駄箱に。
それで、ルリちゃんの身の安全が一番だってさ、別れることになったわけ。
犯人? それがさ、結局分からずじまいだったんだ。せめてルリちゃんに謝れよって話だよな。
「無能教師」……いや、先生はむしろ必死だったよ。何度もアンケートとったり、事情聴取したり。イジメ絶対許さないっていう熱血教師だったからさ。
そうそう。これだけ大胆なことをしてるのに、目撃証言も手掛かりもなーんにも出てこなかったんだよな。
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