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俺はその子にジェスチャーして、喋るのを止めてもらったんだ。それでもやっぱり、ブツブツ声が聞こえるんだよ。たぶん女の声なんだけど、念仏っていうか、呪詛っていうか、早口で永遠と唱えてるかんじ。あたりが暗いから、そいつの正体は見えなくてさ。隣の女の子の顔は真っ青だよ。
俺と女の子は頷き合って、少しずつ歩くスピードを速くしたんだ。正直言うと叫びたかったし、なんならチビりそうだった。だけど、女の子の手前、カッコつけたいのが小学生男児のサガだろ? 漫画で見た格闘術を頭の中でリピートして、怪現象との対決に備えてたよ。
女の子の手を握って走り出した。その時が変な声のピークだったよ。「ぎゃああああ!」っていう甲高い声。いよいよ謎の女の存在が確実なものになって、もう、女の子の部屋まで全力疾走よ。
怖さで泣きじゃくる女の子を部屋に押し込んだと同時に、俺は自分の部屋へ猛ダッシュ。運動会の時より全力疾走だったかもしれない。
だけど、廊下一本分走ったところで気がついたんだよ。
声が聞こえなくなってるって。
少しずつ走る速度を落として、息を殺して、耳を澄ませても、変な声は聞こえない。ビクビクしながら部屋に戻ったけど、結局、何事もなく朝を迎えて、修学旅行も無事に終わったよ。あとで女の子にも聞いたけど、何ともなかったって。
謎の声の正体は分かんなかったけど、向こうの気が済んだなら、下手に詮索して刺激しなくてもいいかって、俺と女の子で話し合った。それで終わり。
……っていうのが、俺の中の二番目の怪現象。「帰りに船が沈まなくてよかったね」……それ、シャレにならんやつ。「ムカデに修学旅行を壊された怨念」……それだとしたら、気持ちが分かっちゃうのが辛いわ。でも、無関係の俺達をビビらせてくるなよな!
ちょっと待って、同接九百人超えたの? ……ゲフッ、ゴホッ、ゴホッ……! レモン……はちみつレモン飲むわ。
……はあ。ごめん、聞き苦しくて。ホント、離脱していいから。コンディション整えられなかった俺のせいで、視聴者の耳にダメージ与えるの嫌だからさ。正直、こんなに伸びると思わなくてさ、こんなに人が来てくれるんだったら、もっと真面目な話題を用意すべきだったわ。
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